キン肉バスター誕生秘話 感想

「キン肉バスター誕生秘話!!」の巻 感想(ストーリーあらすじレビュー)
キン肉マン45周年ということでいろんなもんが出てくる中唐突にゆでたまご先生が読み切りを描いたから読んだ
クローズアップされたのはキン肉バスター
その後キン肉ドライバー⇒マッスル・スパーク⇒キン肉バスターイモータルと上位版の必殺技が次々開発されて今や必殺技のポジションを剥奪されて久しい技だ
だがこのマンガの必殺技の看板的な「代名詞」のような技であり最も人気が高いのもこの技だろう
北斗の拳でいう「北斗百裂拳」やドラゴンボールでいう「かめはめ波」のような位置付けの技だ

実際原作23巻で『孤独の戦士!!』の巻(超人タッグ編決勝戦でテリーマンが地球に喧嘩を売ってソードボードで串刺しになった直後の回)で読者投票による人気投票BEST15が発表された
その1位はこのキン肉バスターだったがこの機会に全ランキングも一応掲載しておこうか
1位 キン肉バスター
2位 マッスル・ドッキング
3位 改良阿修羅バスター
4位 パロ・スペシャル
5位 ロングホーン・トレイン
6位 タワー・ブリッジ
7位 クロス・ボンバー
8位 キン肉ドライバー(なぜかスペシャルマンがくらっている)
9位 ロビン・スペシャル(くらってるのはネプチューンマン?ロビンの身体の表裏が逆で完全な誤植)
10位 ベルリンの赤い雨
11位 ハリケーン・ミキサー
12位 レッグ・ラリアート
13位 ハリケーン・ヒート
14位 キャメル・クラッチ
15位 地獄の断頭台

↑のようなランキング結果だった
超人タッグ編決勝戦の時点でのランキングでさらに細かく言えば「メガトンキング落とし」はまだ世に出ていない段階のランキング
当然王位争奪編に出た技の全ても出ていない
・キン肉星三大奥義(マッスル・スパーク/正偽マッスル・リベンジャー/マッスル・インフェルノ)
・九龍城落地(ガウロンセンドロップ)
・Ω(オメガ)・カタストロフドロップ
・ノーズフェンシング
・トライアングル・ドリーマー
・ナパーム・ストレッチ
・阿修羅稲綱落とし
・超人十字架落とし
・・・など欄起因した可能性の高い技が多く出ている王位争奪編が含まれていないランキングだ
だがこれらが含まれていてもおそらくキン肉バスターの1位だけは揺るがなかったと思う

これ以降『キン肉マン』として公式で技の人気ランキングは開催されていないはず
そろそろ技の人気ランキングもやってみればいいのにな
かなり技が溜まってるんだから
まるでこのオレのアレみてーに溜まってる
さぞかし読者もムラムラしてる状況だろう
ヤりてー

とにかくそんな「人気NO1」必殺技のキン肉バスターをフィーチャーした読み切りってわけだ
プロレスの世界にまで持ち込まれたほどの技だ
そんだけ『キン肉マン』を代表する必殺技だからね
シンプルにフォームがカッコいいというのもある
そして劇場版などでも決め技で使われることが多かった影響もあるかな
当然ゆでたまご先生の中でも思い入れのある技であるに違いない

そもそもそれまでの必殺技ってプロレス技の範疇を出ないものがほとんどだった
テリーマンのカーフ・ブランディングやスピニング・トーホールド
ロビンマスクのタワーブリッジ(アルゼンチン・バックブリーカー)
ラーメンマンのキャメルクラッチ
ウォーズマンのパロ・スペシャル
だから読んでいて「豪快」とか「すごい!」というイメージに欠けるものが多かった

しかしこのキン肉バスター以降は「人間には再現不可能」レベル(プロレスで持ち込まれたものはあんな高くに放り投げられないし落とせない)の必殺技が主流になる
・ハリケーン・ミキサー(こって牛)
・デビルトムボーイ(スプリングマン)
・悪魔のシンフォニー(ステカセキング/100万ホーンが事実ならビッグバンを超えるエネルギーで宇宙全体が崩壊するレベル)
・ブラックホール吸引(ブラックホール)
・アトランティスドライバー/セントへレンズ大噴火/ウォーターマグナム(ぜ~んぶアトランティス)
・ストローで人体エキスチューチュー(ミスター・カーメン)
・ストローで脳みそチューチュー(未知やすえ)
・・・のように完全にプロレス技どころか人間レベルを超越したものばかりになっちまった

正義超人側も
・キン肉ドライバー・マッスル・スパーク(キン肉マン)
・逆・タワーブリッジ/ロビン・スペシャル/ロープワーク・タワーブリッジ(ロビンマスク)
・光の矢(ウォーズマン)
・アパッチの雄叫び/心臓わし掴みマッサージ(ジェロニモ)
・ブレーメン・サンセット/ハンブルグの黒い霧(ブロッケンjr)
・九龍城落地/ピラミッドパワー(ラーメンマン)
・ナパーム・ストレッチ/マッスルスパーク(キン肉アタル)
と、文字通り「超人レベル」の技が主流になっていく

人間(プロレスラー)でもできる技を貫き続けた漢はたった4人しかいない
・ザ・テリーマン(説明不要)
・ネプチューンマン(喧嘩ボンバー/喧嘩スペシャル/ダブルレッグスープレックス)
・キン肉真弓(アイアン・クロー)
・ザ・キンターマン(股間で1トンを持ち上げる)
超人級の「マンガの世界だからできる」技ばかりの中人間でもできる技を貫き通したこの4人は素晴らしいと思う

とにかくキン肉バスターはそれ以降「技が派手に」なるエポックメイキングな転換期的必殺技だといえる
だから今回の読み切りなんだろうがこの技はⅡ世でもいきなり最初に触れられたが「五所蹂躙絡み」というなんか卑猥な名称が正式な技名であり「キン肉バスター」はキン肉マン自信が名付けた(改名した)もの
カメハメによる指導の様子も描かれカメハメは「お前を真のチャンピオンに導くのはあの技だ」とまで予言していた
実際前回の超人オリンピックではキン肉マンはカレクックは敵前逃亡・ラーメンマンはショルダータックル・ロビンマスクはメキシカン・ローリングクラッチホールドと「人間レベル」の技で勝利している
おそらくこの頃まではゆでたまご先生も「あくまでプロレス風に」描いていたんじゃないかと思う
しかしやはり人気を獲得するには「人間離れ」した世界観が必要になると感じた結果がこのキン肉バスターなんだろう

キン肉バスターが世に出て、技が派手になり、「正義超人・友情パワー」という概念が生まれて『キン肉マン』はジャンプを代表する人気マンガになった
7人の悪魔超人編のテリーマンによる「ただいま、キン肉マン」で初めて読者投票の1位を獲得
だがその試合が人間でもできるブレーンバスターによる決着だったというのもおかしな話だけど(笑)
とにかくキン肉マンが真の人気マンガになるきっかけになった技とも言える
オレ自身『キン肉マン』を知ったのは悪魔騎士編からでそこから遡って7人の悪魔超人編⇒ザ・ビッグファイト⇒アメリカ遠征編⇒超人オリンピック編と見ていって「追いついた」形だったから
オレくらいの世代からは7人の悪魔超人編以降から入った読者が多いと思うす怪獣退治編とか宇宙野武士編とかビビンバ絡みのエピソードあたりからこの作品にハマった読者はかなりレアケースだろう

ゆでたまご先生はザ・ビッグファイト前までは人気低迷による打ち切りの危機に瀕していたようで焦りも感じていたんだろう
その原因を「アメリカ遠征編」と言っているがまぁ個人的にはアメリカ遠征編はそれなりに熱かったし宇宙一凶悪コンビ(スカル・ボーズ、デビル・マジシャン組)戦なんて素晴らしかったと思う
寧ろ致命的だったのはその後のタイトル剥奪やらビビンバ絡みのエピソードやらラッカ星での戦いなどこのあたりがガチで「迷走期」でこっちのほうが問題だったと思う
ただ連載期間の長さで言えばアメリカ遠征編が失敗だったのも事実だろうしゆでたまご先生がアメリカ遠征編にトラウマを抱きアニメ化を反対したのもわからなくもない
そもそもゆでたまご先生は当時まだ20才前後の若さだしそうそう面白いストーリーがポンポン浮かぶわけもないし無理もない話だ
そしてアメリカ遠征編以後の迷走期のストーリーも丸々アニメ化されてないわけだから

ザ・ビッグファイトでもキン肉マンはキングコブラや便器相手にギャグみたいな勝ち方で勝ち進みまだまだギャグマンガの範疇を抜けきれずに「真の人気マンガ」になる雰囲気がない状況が続いていた
アレキサンドリアからは再三「さっさとヤれや」的にせっつかれていてあの熱かったアメリカ遠征編の宇宙一凶悪コンビ戦でもヤッてりゃもっと楽勝だったと言われてる
そして今回の読み切りで準決勝のウルフマン戦にてキン肉バスターを初披露することを考えた描写が描かれた
この試合は土俵際の粘りからのかんぬきスープレックスで勝利したわけだがそのかんぬきで持ち上げた瞬間にキン肉バスターにいくチャンスがありキン肉マンもミートもそれを考えたようで
ただキン肉マンはそれを躊躇い結局かんぬきで投げただけで終わった
試合後にミートはそのことで激昂しまくるがあの試合は相撲ルールだからキン肉バスターをヤッたら先に尻がついてしまうことでキン肉マンが負けになっちまうんだがな

キン肉マンは48の殺人技がどれも素晴らしすぎてダメ超人である自分がこんな神の領域のような技を使うのは偽りのファイトじゃないかと苦悩していたのがなかなかキン肉バスターを出せない原因だった
人間の格闘家で例えるなら本当は貧相な肉体で力もないからステロイドでドーピングしてものすごい肉体を作り上げて強さを誇示するようなものと葛藤していたという感じかな?
実際はゆでたまご先生がウォーズマン戦になって閃いた技なんだろうが後付けでこんな深いテーマを持ってくるとは・・・
これ元々はギャグマンガなんだけどね
どんどんテーマも内容も世界観も崇高になっていく
たまりません

カメハメはキン肉マンをブン殴って他人から信用されたければ自分の恥や嘘の部分もさらけ出せと熱く説教する
でも確かにこれは真理
自分のことを開示しなければ真の信用って得られないのはビジネスの世界でも同じ
「顔」が見えない相手を心から信用できるわけないからね
さすがカメハメ師匠
長生きすると肉体が衰えていいことないみたいによく言われるけど知識と経験だけはどんどん高まるしこれが絶対的に有利になるんだよな

48の殺人技もフィニッシュに使える技は
・キン肉バスター
・風林火山
・超人絞殺刑
くらいしかない
肉弾エルボーも48の殺人技とされているがこれはアニメスタッフが勝手に入れたようだしそもそもあれはブラックホール脱出のエネルギーも加味されたものだから除外

そう考えるとそこまで「偽りの自分」とか気にしなくてもいいとは思うが
ちゃんと修行した上で習得したわけだし
ただ修行期間がかなり短期間だったしそんな短期間で急にあんな強くなってラッキーなのかズルいのかという感じは確かにあったかな
だからマジメな(?)キン肉マンはそこに悩んでしまったということか
フェニックスみたいにどんどんドーピングして他人の技も奪いまくるようなタイプだったら全く気にしないんだろうけど
意外にマジメなキン肉マン

ウォーズマン戦ではラーメンマンの名言でもある「機械に屈するのか?」から始まる心の声がこの読み切りでも描かれた
あの時のキン肉マンはラーメンマンだとわからなかったという設定だったがここも何の説明もなく心の声によるテレパシーで会話してたことに都合良く改変された
そしてその脳波による会話でラーメンマンまで「今こそそれを使うときなんじゃないかな」的に背中を押された事実まで描かれた
カメハメによる「人を殺さぬ殺人技で相手の邪念のみを殺す」という“48の殺人技の本懐”も矜持も思い出された
そんなあれやこれやでついにキン肉バスターを公開したキン肉マン
「人を殺さぬ殺人技」というけど普通にステカセキングとアトランティスを殺してはいるけどね

キン肉バスターがウォーズマン戦で満を持して初公開された背景にはこんないろんなことがあったと思いっきり後付けで描かれたこの読み切り
思った以上に熱くそして深い内容だった
ゆでたまご先生のキン肉バスターに対する思いや当時の苦悩のようなものまで垣間見えたというか想起されたというか
この試合のレフェリーがレッドシューズマンだったとは今の今まで40年間全く気づかなかった

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